オープンチューニングの世界へようこそ

ギターのチューニングは、昔からEADGBEが「レギュラー」として使われてきましたが、当然ながらこれだけではありません。
過去、現在を問わず、様々な名曲がレギュラー以外の「変則チューニング」を利用して、生み出されています。
特にアコギの世界では、1-6弦の開放音を特定のコードに合わせる「オープンチューニング」がよく使われています。
オープンチューニングが利用されるのは、運指を簡単にしたり、スライドバーを使いやすくしたり、中にはキース・リチャーズのように「ステージでタバコが吸えるように」といった理由もあったりします。

ですが、最も大きいのはおそらく、アコギで最も美しい「開放弦」の響きを最も活用できることでしょう。
バレーコードでは得られない豊かなサステインと音色を、曲のメインコードで利用することで、魅力を引き立たせるわけです。
オープンチューニングは数多く存在しますが、それぞれに個性があり、弾いてみると今までと異なるフィーリングを感じることでしょう。
インスピレーションが沸いてきて、新しいアイデアやフレーズが生まれるかもしれません。
今回は、代表的なオープンチューニングの種類・音名と、それを利用したギタリストや名曲を紹介していきます。
チューナーにつないで、いつもと違うチューニングにしてみるだけで、ギターの新しい世界が見えてくるかもしれませんよ!
オススメのオープンチューニング9選と練習曲
※カッコ内はレギュラーからの音程差です。
オープンG
6弦 D(-2)
5弦 G(-2)
4弦 D
3弦 G
2弦 B
1弦 D(-2)
The Rolling Stones / Wild Horses
ローリング・ストーンズのキース・リチャーズが、6弦を外して使っていることであまりにも有名なチューニング。ブルースやカントリーのスライドギターと相性がよい。
オープンA
6弦 E
5弦 A
4弦 E(+2)
3弦 A(+2)
2弦 C#(+2)
1弦 E
Robert Johnson / CrossRoads Cross Road Blues
レギュラーチューニングの4弦~2弦を全て全音上げることで完成。名ブルースギタリスト、ロバート・ジョンソンが残した「クロスロード・ブルース」など数々の名曲で、オープンAの味わい深いギターを聞くことができる。
オープンE
6弦 E
5弦 B(+2)
4弦 E(+2)
3弦 G#(+1)
2弦 B
1弦 E
The Allman Brothers Band / Little Martha
6弦開放のEがそのままベース音で使えることから、こちらもスライドバーを多用するブルース系ギタリストに好んで使われる。最近ではデレク・トラックスが多用していることでメジャーに。オールマン・ブラザーズ・バンドのアルバム「イート・ア・ピーチ」に収められたアコギ小曲「リトル・マーサ」は、このチューニングで演奏されたもの。
オープンD
6弦 D(-2)
5弦 A
4弦 D
3弦 F#(-1)
2弦 A(-2)
1弦 D(-2)
Bob Dylan / Corrina Corrina
レギュラーからチューニングを上げて対応するオープンEに対して、下げて対応するのがオープンD。ノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランが、数多くの名曲をオープンDで残している。1962年にリリースされたアルバム「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」に収録されている「コリーナ、コリーナ」も、その中のひとつ。
オープンGsus4
6弦 D(-2)
5弦 G(-2)
4弦 C(-2)
3弦 G
2弦 C(+1)
1弦 D(-2)
Led Zeppelin / The Rain Song
レッド・ツェッペリンのアルバム「聖なる館」に収められている、叙情的なアコースティックの名曲「The Rain Song」で利用されているチューニング。マイナーかメジャーを決める3度の音を使わず、1度4度5度のみで構成されているため、浮遊感のある不思議な響きが生まれている。
オープンC6
6弦 C(-4)
5弦 A
4弦 C(-2)
3弦 G
2弦 C(+1)
1弦 E
Led Zeppelin / Bron-Yr-Aur / Friends
レッド・ツェッペリンのギタリスト、ジミー・ペイジは数多くのチューニングを使い分けて、名曲を残してきた。
このチューニングも、アルバム「フィジカル・グラフィティ」に収められたアコースティック小曲「ブロン・イ・アー」や、アルバム「レッド・ツェッペリンIII」に収められた「フレンズ」などで使われている。
6弦をレギュラーから2音下げるため、使用弦はヘビーゲージがオススメ。
DADGAD
6弦 D(-2)
5弦 A
4弦 D
3弦 G
2弦 A(-2)
1弦 D(-2)
Led Zeppelin / kashmir
Dコードの1度4度5度で構成されるため、オープンDsus4とも言えそうだが、慣例的に「ダドガド」と呼ばれる。
アイリッシュな美しい響きが特徴で、どこか民族的な響きが漂うレッド・ツッェペリンの名曲「カシミール」はこのチューニング。
押尾コータロー / 翼~you are the HERO~
日本人で「DADGAD」の名手と言えば、押尾コータローが挙げられる。
2007年に発表された「翼~you are the HERO~」では、明るい曲調ながら、翼というタイトル通り、どこか軽やかな響きが漂っている。
DADEAD
6弦 D(-2)
5弦 A
4弦 D
3弦 E(-3)
2弦 A(-2)
1弦 D(-2)
John Renbourn / The Pelican
「DADGAD」の3弦を3音下げたチューニング。オープンDsus2とも言えるが、こちらも慣例的に「ダデッド」と呼ばれる。
ケルティックで民族的な雰囲気が、「DADGAD」よりもさらに強く感じられる。
イギリスのギタリスト、ジョン・レンボーンによる「ペリカン」は、「DADEAD」の独特な和声の美しさを生かした名曲。
ナッシュビルチューニング
6弦 e(+12)
5弦 a(+12)
4弦 d(+12)
3弦 g(+12)
2弦 B
1弦 E
伊勢正三 / 22才の別れ
音名はレギュラーチューニングと同じだが、3弦から6弦を全て1オクターブ上げている。
通常の弦のゲージでは、オクターブを上げるのは不可能なので、細い弦を特別に用意する必要がある。
レギュラーチューニングと同じフォームが使えながらも、コードの構成音が高音域で近接するため、キラキラしながらも緊張感の漂うアルペジオとなる。
伊勢正三の代表曲「22才の別れ」に漂う、物悲しい雰囲気はこのチューニングの効果が大きい。
まとめ
今回9つのオープンチューニングと、代表曲を紹介してみました。どの曲も変則チューニングですが個性がありますよね。
是非ご自分の演奏にも参考にして頂ければと思います。