ギターの弦の選び方
迫力のストロークから、繊細なアルペジオまで、私達を魅了してやまないアコースティックギターのサウンド。
その音色を奏でるのに欠かすことができないのが、弦の存在です。
アンプを通さない生音の素晴らしさが問われるアコースティックギターの世界は、エレキギターよりも弦の占める重要性が遥かに高いと言えるでしょう。
しかし「何となく…」「これしか使ったことがないから…」で弦を選んでいる人は、もしかするとギターのポテンシャルをフルに発揮できていないかもしれません。
材質やゲージの特性を理解して適切な弦を選ぶことで、理想のサウンドに近づけていきましょう。

アコギの弦の種類
アコースティックギターの弦は、大きく2種類に分かれます。
・ガット弦
クラシックギター、フラメンコギターなどに利用。昔は羊の腸を使っていましたが、現在はナイロン製が一般的です。
・スティール弦
一般的なアコースティックギターに利用。銅、スズ、リンなどの合金が、主に利用されています。
ここではスティール弦に絞って、主な種類と特徴を見ていきましょう。
・ブロンズ弦(Bronze)
アコースティックギター弦で最も使われている材質。ブロンズと言っても銅100%ではなく、銅80%、スズ20%の合金が主流。
見た目は金色で、バランスがよくフラットな音域が特徴。ストローク系のスタイルに向いています。
[aside type=”normal”]主なメーカー:マーティン(Martin)、ダダリオ(D’Addario)、アーニーボール(Ernie Ball)[/aside]・フォスファーブロンズ弦(Phospher Bronze)
銅とスズにリンを加えたことで、高域が強調されてキラキラした音色。見た目はブロンズ弦よりも赤みがかっています。手触りが滑らかでノイズが少なく、フィンガーピッキングやソロギターに好まれています。
・コーティング弦(Coating)
弦の表面に特殊なコーティングをすることで、滑りやすく、錆びにくく、寿命を長持ちさせることに成功。通常の弦に比べて高価ですが、コーティング技術の進化と、弦交換の手間と労力を考えた際のコスパの良さから、選択する人も増えています。

■弦の太さ(ゲージ)
弦の材質と同時に、重要になってくるのが弦の太さです。出音に大きな影響を及ぼすだけでなく、演奏のしやすさにも関わるためです。アコースティックギターは生音の大きさが重要なので、同じゲージの呼び名でもエレキギターより太めになっています。ここでは、最もポピュラーなマーティン弦のゲージを見てみましょう。
・エクストラライト(Extra Light) 010、014、023、030、039、047
・カスタムライト(Custom Light) 011、015、023、032、042、052
・ライト(Light) 012、016、025、032、042、054
・ミディアム(Medium) 013、017、026、035、045、056
※ゲージはすべてインチ表記
工場出荷時はライトで調整されることが多いので、最もスタンダードなゲージはライトと言ってよいでしょう。
エレキギターがメインだったり、力の弱い女性や子供の場合は、細めのゲージ。パワフルなストロークで音量を稼ぎたければミディアムがよさそうです。
[voice icon=”https://www.guitar-shop.jp/blog/wp-content/uploads/2016/09/sugimoto_tencho.jpg” name=”スギモト” type=”l big” type=”r fb”]性別・年齢やどんな音を出したいか?で弦を選ぶ事が重要ですね![/voice]ギターの弦の選び方は「弦の材質×太さ×演奏性」
一般的に、弦は太い方がテンション(張力)が強くなるため、コシのある力強い音が出る傾向にあります。
これは、生音で勝負するアコースティックギターでは、とても重要なポイントです。
しかし、太い弦は指板を押さえるのにも力が必要なので、「いつもの弦なら鳴らせたコードがきれいに鳴らない…」ということも十分にあり得ます。
また、繊細なフィンガーピッキングを聞かせたいのに、ガチガチの太い弦ではニュアンスが出しづらく、逆効果になってしまうこともあります。
自分のギタースタイルを考えた上で、「弦の材質×太さ×演奏性」の最適なバランスを見つけることが、上達への第一歩と言えるでしょう。
とはいっても選ぶのが難しい場合は、「あんなギターが弾けるようになりたい!」と憧れているアーティストを思い浮かべてみてはいかがでしょう?
パワフルなストロークプレイが好きなら、ブロンズ弦のミディアム、キラキラ美しいアルペジオに恋い焦がれるなら、フォスファーブロンズ弦のカスタムライト、など、弦のチョイスだけでも憧れの音に近づけます。練習のモチベーションも上がるはずですよ!
適切な弦の交換時期は?

「使ってみたい弦は決まったけど、いつ交換すればいいんだろう?」と悩む方も多いと思います。
アコギの弦は最も安いもので500円ぐらいから、高価なコーティング弦だと1500円ぐらいまで、バリエーションは広いです。
消耗品と考えると、決して安い買い物ではないですが、生音が全てを語る世界では、古びた弦で演奏していても音の良し悪しが判断できず、上達のスピードにも悪影響を及ぼしてしまいます。
面倒がらず、適切な時期に弦交換を行うようにしましょう。
交換のタイミングは、環境や頻度によっても異なりますが、基本的に月1回は行うことをオススメします。
手汗をかきやすい人や、毎日練習している人は、月2回ぐらいでもよいかもしれません。

演奏後にしっかりクロスで拭いたり、エリクサーなどのコーティング弦を使っていれば、1ヵ月後でも目に見えるサビは少ないかもしれませんが、張りたての弦が持つきらびやかでエッジの立った音は、張った直後からドンドン失われていきます。
月1回は弦の張り替えをしよう
特に巻き弦は、時間が経つとピッチが合いにくくなるなどの悪影響も出て来るので、「今月はそんなに弾いていないな」と思ったとしても、「毎月◯日は弦交換の日」と決めて、習慣化することをオススメします。
またエレキと異なり、アコギの弦が切れることはなかなかないと思いますが、万が一プレーン弦などが切れた場合は、切れた弦だけを交換するのではなく、必ず全ての弦を交換するようにしましょう。
他の弦も古くなっている可能性が高いですし、どれか特定の弦だけが新しいと、音色のバランスも取れなくなってしまいます。
アコースティックギターの弦の張り替え方法
そもそも弦の張替えってどうやればいいの?という初心者の方もいらっしゃると思うので張替えの一連の流れを説明いたします。
アコースティックギターの弦の張り替えに必要なもの
①新しい弦
②ニッパー
③チューナー
まずこの3つを買い揃えてください。
それでは順を追って弦の張り替えの手順を説明していきます。
弦の張り替えの手順
1・弦を緩める

金属のゴムパッチンみたいなもので、切れた反動で手や顔に飛んでくることもあります。
かなり危険で、手や顔に当たったら100%ミミズバレ、目に当たろうものなら大ケガしかねません。
人がケガをするしないは関係なしにテンションがかかった状態の弦をいきなり切るとその反動が楽器本体にもダメージを与えます。
特にアコギはボディートップの板も薄く、ネックのマホガニーも強度に優れているとは言えません。必ず弦を緩めてから取りかかりましょう。
2・弦をニッパーでカット

3・ブリッジピンをワインダーなどを使っててこの原理で取り外します
(このときボディを傷つけないようにクロスなどでガードしておくとよいです。)

アコギの場合、基本的にはブリッジピンの下にボールエンドを入れているため、弦交換で古い弦を取る際にピンを抜かなければいけません。
アコギ弦交換で初心者が戸惑いがちなのがブリッジピンの抜き方。ピン抜きなしでブリッジピンを抜く方法を説明いたします。
ブリッジピンの上部は小さく丸いので力が入りにくく、手で摘まんで抜くのはちょっと無理があります。その程度で抜けてもらっても困りますしね(笑)
市販されている専用のピン抜きはテコの原理を使って抜くので楽ですが、テコの支点となる場所に跡が付く場合があり、初心者の方にはあまりオススメできません。
簡単なのはサウンドホールに手を突っ込んで、ピンを裏側から押してはずしています。
ボディーの中に手を入れるというと抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、何も難しいことはありません。
ボディーに手を中に入れる → 裏からブリッジピンを押す。たったこれだけ(笑)これで簡単にはずれます。
ピンが尖っているなどで押すのが痛い場合はクロスを当てれば楽に押せます。クロスが無ければタオルでも大丈夫です。
見えない場所なので心配な方もいらっしゃるとおもいますがアコギの内部に巡らされたブレイシング(力木)はよほど強く手をぶつけたりわざと叩いたりなど、荒く扱わなければまず問題無しです。
エレアコの場合は更に配線があったりしますが、強く引っ張ったりしななければまず問題無しです。
なお、まれにブリッジピンと穴の間から出ている弦を押し込むだけで抜ける場合もあります。ただ、これはピンと穴の精度が高く、相性がよかった場合のみできる芸当。
ピンは結構入れ替わってしまいますし、いつもできることではありませんので、基本的には裏から押すのが最も早いと憶えておきましょう。
4・ボディと指板を掃除

普段は弦が張られているため、フレット周辺やブリッジの掃除は完全にはできません。弦交換のタイミングでしっかりお手入れをしてあげましょう。
最初にクロスで指板を軽く拭き取ってから、指板専用のレモンオイルやオレンジオイルなどをクロスに染み込ませて、指板全体を入念に磨き上げます。
特に冬場は乾燥で指板が割れてくることもあるので、揮発性が低めのオイルで適度に保湿してあげることが大切です。

フレットが経年変化でくすんでいるような場合は、フレット専用のクロスなどでピカピカに磨いてあげるのもいいですね。
普段手が届きづらい所ですのでしっかり掃除してあげましょう。
5・新しい弦取り出します。

6・新しい弦をブリッジの穴に通す。

7・新しい弦をブリッジピンを差込む

弦をブリッジに弦を差し込む前に、ボールエンドから5mm~1cm程度のところをくの字に折り曲げましょう。
曲げずに弦を巻くと、ブリッジピンが弦に引っ張られてそのまま抜けていきます。
たまに曲げずとも抜けないこともありますが、使っているうちに弦とともにピンがはじけ飛んでしまう可能性もあり危険です。
こうすることで弦が引っ張られる力の方向がブリッジピンに対して上に抜ける方向ではなく横方向に力が加わり、ピンが横に押さえつけられます。
これでペグを巻いてもブリッジピンは穴の内壁に押さえつけられ抜けることはありません。
なので、弦を折り、ボールピースをネック側に向けた状態で入れるのが正しい入れ方なのです。(コツをつかめば折らなくてもうまいこと同じように入れられるようになります)
もう一つ注意点ですが、弦を長めに入れてしまうとペグを巻いた時にその分出てきてしまい、ペグポストに巻く長さが適切でなくなってしまいます。
ブリッジピンで蓋をする際に弦を引っ張って遊びを解消しておきましょう。
なおブリッジピンや穴の大きさは結構適当ですし、弦の太さによっても飛び出し方は変わります。ピンの飛び出方は多少バラツキがあっても問題ありません。
8・弦にある程度余裕を持たせ、巻き始めのポイントで折り目をつける

9・弦を内側から外側に巻き取る(左右反対巻きになるので注意)

10・弦を1本ずつ内側から外側に巻き取る

いよいよ弦を張っていく際にこの時初心者がやりがちなのが、弦をまるまるそのまま全部巻いてしまうこと。
弦の巻き方が悪いとテンション異常により弦の振動が不安定になって音程が悪くなったりビビりが出るようになってしまいます。
ペグポストで弦が下に向かって2周前後で巻くのが正しい張り方で、そのためには弦を切る必要があります。
そして二周程度の目安ですが…アコギの場合弦を張ろうとするペグよりペグとペグとの間隔1個~1個半程度の距離の場所が、大体アコギ弦がペグに巻かれる2周程度の目安となります。
エレキギターはペグ2個分先くらいが目安ですが、アコギは弦が太いため2個先では長すぎます。
折った部分をペグポストの穴に引っ掛けるようにして、外れないようにしながら下へ下へと巻いてしまいましょう。
本当は弦の太さやペグポストの高さなどで最適な残す長さは違うので、慣れてきたら少しずつ調整してみましょう。弦を入れた穴の上にも一周して挟みたい場合はその1周分長めにとります。
11・弦を伸ばし、余った弦をカット

12・チューニング

張りたての弦は柔らかいためかなり伸びやすく、チューニングしてもすぐにズレてしまいます。
力加減に注意して、ある程度チューニングが落ち着くようチューニングしては伸ばしてを2、3度繰り返しましょう。
弦をチョーキングして伸ばす方が多いのですが、フレットの摩耗につながるのであまりオススメしません。真上に向かって垂直に引っ張った方がフレットに優しいのでオススメです。
弦を交換する際にメンテナンスと弦高調整をしよう
せっかく弦を外して交換するなら、その前後で指板やネックのメンテナンスを行っておきましょう。
トラスロッドの調整をしよう!

弦が張ってある状態で、1フレットと13フレットあたりを両手で押さえて、7~8フレットと弦の下端とのスキマを見てみましょう。
厚めの名刺1枚程度のスキマがある状態が、演奏には最適な状態と言われています。スキマが空きすぎていれば順反り、逆に全くスキマがない場合は逆反りの可能性が高いので、トラスロッドで調整しておきましょう。
順反りの場合は時計回りにロッドを締め、逆反りの場合は反時計回りにロッドを緩めることで、ネックの反りが解消されていきます。
ただしロッドを一気に回しすぎるとネックが壊れてしまうので、最大でも1回30度程度で止めて反りの状態を確かめながら行いましょう。
経験のない人は、最初はギターショップに調整をお願いして、実際に見て覚えることをオススメします。
弦高調整をしよう!

アコギの演奏性や音色に大きく影響を及ぼすのが弦高です。高すぎると弾きづらいし、低すぎると弦がビビって響きが悪くなります。
さらに一般的なアコギはエレキとは異なり、弦高調整はサドルを削るという大掛かりなものになるため、簡単には手を出せないのが現実でしょう。
しかし筆者の経験上、アコギの弦高を少し下げただけで見違えるように弾きやすくなることがよくあります。
プレイスタイルにもよりますが、アコギの弦高は、12フレットと弦の下端のスキマを測った際に、6弦で2.5ミリ前後、1弦で2.0ミリ前後が標準とされています。
エレキよりも約0.5ミリほど高い設定です。ここから、ストローク主体のプレイヤーは鳴りを重視して少し高めに、フィンガーピッキング主体のプレイヤーは演奏性を重視して低めに設定することが多いです。
またエレキと併用する場合は、持ち替え時の違和感を少なくするために、低めが好まれています。
弦高はサドルを削ることで下げることはできても、上げることができないため、メーカー出荷時は高めに設定されることが多いです。
実際に弦高を測ってみた上で、ちょっと高めで弾きにくく感じる場合は、迷わず自分の好みに合わせて調整してみましょう。
ただしサドルの底面を平行に削るのは一定の技術が必要ですし、音色に大きな影響を及ぼすパーツでもあるので、慣れていない人はギターショップに依頼した方がベターだと思います。
まとめ
アコースティックギターの弦の選び方から交換時期、そして弦高調整までをまとめてみました。
自分のスタイルに合った弦を選ぶ、しっかりと調整し、そして定期的に交換・メンテナンスを行う事でいつまでも美しい音色を奏でる事が出来るはずです。
試してみて下さい。